進行直腸癌に対する骨盤内臓全摘術及び
薄筋による有茎筋皮弁形成移植術

要町病院付属消化器がんセンター
元、癌研究会附属病院消化器外科
太田博俊
高橋 孝、澤泉雅之、関 誠、松本誠一、二宮康郎

直腸癌が膀胱、仙尾骨ならびに会陰皮膚に波及浸潤した症例に対し、骨盤内臓全摘、仙尾骨合併切除、さらに大きく欠損した会陰皮膚部に対して薄筋による筋皮弁有茎移植術を施行し、一時的縫合が出来、根治切除が出来ましたので供覧します。
症例は48歳男性。肛門から会陰皮膚に拡がる癌のため、疼痛を伴い、注腸レントゲン、内視鏡が出来ないため、MRI、CT(5枚)での画像診断で癌の拡がりを確認し診断しました。載石位とし下腹部正中切開で開腹しました。ダグラス窩の洗浄細胞診を病理に提出します。術野展開のため、小腸を腹膜バックに収納します。S状結腸間膜左の後腹膜を切開剥離し左尿管を露出し、テーピングします。同様に右尿管を露出しテーピングします。IMAを根部で、またIMVを同じ高さで結紮切離する定型的郭清をします。ストーマ造設予定の部位で結腸を切離します。大動脈分岐部を郭清し、両側の腸骨動静脈沿線を郭清します。癌が浸潤している仙尾骨を合併切除しますので、正中仙骨動静脈を結紮切離します。膀胱側腔に向かって剥離し、上膀胱動脈を結紮切離し、左右尿管をゆとりを持って切離し、断端よりアトム管を腎盂まで挿入し尿を体外に誘導しておきます。両側の内腸骨動静脈の結紮切離は上殿動静脈に癌浸潤がないので、その末梢で結紮切離します。輸精管を可及的末梢で結紮切離します。左右の側方を郭清し、閉鎖動静脈は閉鎖孔の前で結紮切離しますが、閉鎖神経は温存しテーピングしておきます。仙骨前面を剥離下行し癌浸潤部が第4仙骨まで浸潤していることを確認し、第3仙骨下縁にノミで切れ目を入れボルトを2本ねじ込みます。ボルトは仙骨を貫き、仙骨背側の皮膚から出る長さが必要です。このボルトから下方の仙尾骨を合併切除します。会陰皮膚と仙尾骨を合併切除するために、正中開腹創を仮縫合し、腹臥位にします。会陰部は癌浸潤縁から十分距離を取り皮膚切開します。癌露出部にはガーゼで被覆しておきます。ボルトの露出先端を確認しボルトを含めたところまで皮膚切開を延長します。大殿筋の仙尾骨付着部を止血しつつ切離し、仙尾骨切痕に向かって尾骨筋、仙結節靭帯を切離し、肛門挙筋上縁を切離していくと仙尾骨がはずれます。骨切断端には骨ロウを塗り骨髄出血を止めます。ついで膀胱合併切除に移ります。腫瘍塊を持ち上げ、膀胱前面から外尿道口周囲に入り、恥骨前立腺靭帯を切離し、陰茎背静脈にひきつづくSantorini静脈叢が確認できますので収束結紮します。尿道は外尿道口で結紮切離し一塊となった腫瘍は摘除終了です。仙骨切離断端を被うため出来る限り皮膚縫合し会陰皮膚欠損部を小さくします。つぎに仰臥位に戻し、足は開脚位にします。有茎筋皮弁に使用する薄筋は大腿内側に位置し、恥骨起始部から脛骨粗面に付着する薄い筋肉です。栄養支配血管は大腿深静脈から分岐した内側大腿回旋動脈の枝で、恥骨起始より約10cmのところで、薄筋全長の中枢1/3の所にあり、長内転筋と大内転筋の間を通り、表層に向かい薄筋表面より筋肉内へ分布しています。両大腿部より筋皮弁を採取するにあたり、欠損部の広さを計測し、左右筋皮弁で欠損部を補填します。有茎筋皮弁を大腿内側の皮下に通し、左右の筋皮弁を縫合し丹念に皮膚縫合していきます。(シューマ静止画像)その間、同時進行で両側尿管を回腸導管に移植して右腹直筋を通して造設し、左腹直筋内にはストーマを造設します。仙骨前面にドレーンを挿入して閉腹し筋皮弁有茎移植の終了です。摘出標本ですが、癌は一塊となり仙尾骨、前立腺、膀胱、会陰皮膚に浸潤していました。







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