直腸癌術後鼠径部再発に対する局所切除及び
腹直筋による有茎筋皮弁形成移植術

要町病院付属消化器がんセンター
元、癌研究会附属病院消化器外科
太田博俊
高橋 孝、澤泉雅之、関 誠、二宮康郎

直腸癌術後に鼠径リンパ節再発を来たし放射線治療を受けましたが、再び、局所の皮膚に自潰再発し、QOLが著しく損なわれた症例に対し、鼠径局所を大きく切除し、欠損部を筋皮弁で補填し創傷治癒できましたので供覧します。
症例は66歳、女性。直腸癌の手術を受け、人工肛門が造設されています。術後5か月、鼠径リンパ節に再発し、放射線、化学療法を受けるも再再発し、紹介受診したときには、7×5cmの皮膚自潰創になっていました。周囲の皮膚壊死を考慮すると10cm以上の皮膚切除が必要で、筋皮弁の有茎移行術の適応と判断しました。鼠径部のCT画像です。左鼠径部に再発した腫瘍が認められます。MRI画像でも同様の所見を認めます。鼠径再発部を中央に12×13cmの切除範囲と腹直筋筋皮弁採取のデザインを示します。人工肛門にはパウチをつけておきます。デザインに沿って再発部の皮切を開始します。手術操作での病巣圧迫での癌細胞の術野汚染防止のためにシーツで覆っておきます。病巣部を中心に大腿部の筋膜まで可及的に切除側につけ大伏在動静脈を確認し、分枝を結紮切離し鼠径靭帯を露出していきます。放射線治療を受けていますので、繊維性癒着が見られ剥離がやや困難です。転移巣が大伏在静脈に癒着浸潤していますので、静脈の中枢と末梢にテーピングし、血管合併切除をします。静脈内面に癌浸潤が認められました。離断された静脈再建に、右伏在静脈から移植するのに足りる血管を採取し、ブルドック鉗子で中枢と末梢をはさみ、25mm長の静脈を移植パッチ縫合しました。次に、腹直筋皮弁のデザイン線に沿って皮膚切開を行います。腹直筋は季肋部までの全長を使用しています。弓状線を確認しつつ後鞘を温存して腹直筋を遊離していきます。筋皮弁を欠損部に移行するために皮弁の中央で皮膚及び皮下組織までの切開を入れ、円形の欠損部に合わせるため右回転させ、欠損部に移動し周囲皮膚と筋皮弁を縫合していきます。(皮弁回転のシェーマ)筋皮弁有茎移植の完成です。摘出標本です。皮膚は十分切除されています。剥離面です。ペアンで示したのが合併切除した静脈です。割面でEW(−)と診断しました。本術式で、術後は入浴可能となり下着の汚染もなく、通常の生活が出来るようになりQOLは著しく向上しました。








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