結腸癌術後局所腹壁再発に対する腹壁合併切除及び
腹直筋による有茎筋皮弁形成移植術

要町病院付属消化器がんセンター
元、癌研究会附属病院消化器外科
太田博俊
高橋 孝、澤泉雅之、関 誠、二宮康郎

症例は47歳女性、幼少時左腎摘出術を受けています。他院にて下行結腸癌の手術を受け、9か月後、CTで側腹壁に浸潤した65mmの腫瘤を認め、局所腹壁再発と診断されました。全身検査で遠隔転移のない局所再発と診断し、側腹壁合併切除術を計画し、欠損部に腹直筋皮弁有茎移植術をしましたので供覧します。
MRI、CTで腫瘍陰影を認めます。腹部皮膚に腹直筋皮弁採取のデザインをします。移植には患側と同じ側の左腹直筋を使います。再発腫瘍が胃壁大彎、トライツに近い空腸壁に癒着、浸潤していましたので、トライツ靭帯を剥離し癌癒着浸潤部から離れたところで空腸をリニアカッターで切離し断端を埋没縫合しました。切除空腸の血管処理を行い、約8cmほど切除し、結腸後で空腸端を十二指腸側へ授動し、再建は十二指腸空腸を側側でアルベルトレンベルト吻合しました(再建シェーマ)
腫瘍は胃壁大彎にも癒着浸潤していましたので、リニアカッターで部分合併切除しました。次に一塊になった腫瘍を側腹壁から摘除します。腫瘍が浸潤している皮膚側を径8×8cmに円形皮切を加え、腹腔側からも切除を進め、肋軟骨にも浸潤していましたので合併切断していきます。転移腫瘍が一塊に切除できました。次に、皮膚欠損部に対して、左腹直筋で筋皮弁を作成します。三角皮弁を欠損部に充填するわけです。腹横筋から剥離し、下腹壁動静脈を結紮切離します。皮膚と筋層が離れないように一針かけておきます。腹横筋から腹直筋を腹直筋鞘後葉を温存する層で遊離していきます。腹直筋から横走分枝する血管は丁寧に結紮していきます。腹直筋は全長にわたって利用します。腹直筋外縁の半月線に沿って遊離していきます。次に遊離された有茎筋皮弁を正中創から腹腔内を通しますが側腹欠損側から挿入したケリー鉗子に筋皮弁の端を把持し、支配血管である内胸動静脈から続く腹壁動静脈を損傷しないようにゆっくり引き出します。欠損皮膚のサイズに合わせて皮弁をトリミングし、層層に縫合していきます。有茎腹直筋皮弁による腹壁欠損部充填の完成です。次に、腹壁の縫合に移ります。上腹部正中創より腹腔内局所にデュープルドレーン2本を留置し、閉腹します。下腹部は皮弁採取部の欠損部縫合による変形を防ぐため右下腹部皮膚を同様に切除し、逆T字型に縫合します。切除標本です。再発腫瘍、胃壁の一部、空腸、脾臓、腹壁が一塊となって合併切除され、側腹壁の皮膚の大きな欠損口は腹直筋皮弁で修復補填できました。


腹壁合併切除及び腹直筋による有茎筋皮弁形成移植術 シェーマ1





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